務体感型のインターン
Chapter1インターンついて
株式会社村田製作所について
ファンクショナルセラミックスをベースに、パソコンやスマートフォン、クルマ等に使われる電子デバイスの研究開発・生産・販売を行っている。 グループで売上は1兆円、従業員数は70,000名を超える日本を代表する電子部品メーカー。積層セラミックコンデンサを始め、世界シェアNo1の製品をいくつも生み出している。 新卒採用数は毎年200~300名(18卒は技術系:200名、事務系:40名)。また、2016年の定着率は98.2%に登り、その入社満足度の高さが窺い知れる。
まずはお二方について教えてください。お二方ともずっと人事畑というわけではなく、社内ローテーションの中で人事を担当されているのですか?
菊池:私は新卒で入社して3年目になるのですが、最初の半年間は工場実習があるため、採用の仕事は1年半ぐらいです。
川勝:私は人事として採用の仕事をやり出して2年弱です。それまで35年、新卒で入社して以降ずっと技術部門にいました。 これまでの経験が非常に人事業務に活きていることを実感します。例えば、現場からの採用ニーズはもちろんですが、学生さんの研究テーマを見ても、何をやっているのかは大体わかります。技術部門の管理職として、採用面接も十何年もやってきていますので、採用についても大体把握できています。大学とのコミュニケーションも仕事上ずっとやってきていますので。
たしかに仰る通りですね。ありがとうございます。インターンはいつ頃から始められたのですか?
川勝:このインタビューに備えて、記録をたどってみたところ、15年程前から始めていたようです。
そんなに前から始められていたのですね。
川勝:その頃は規模も非常に小さくて、1回10人~15人の規模で実施していました。3年前から現在の規模や方法で実施しています。
3年前からなのですね。
川勝:はい。現在は事前に人事が面接して、かつ用意したテーマから、学生さん自身がやりたいテーマを選んで上でエントリーいただいていますので、受け入れ部門の満足度も学生さんの満足度も、かなり高いのではないかと思います。 部門のメンバーも一生懸命担当してくれています。やっぱり、熱意があって専門性も合う学生が来るので、部門としてもすごくありがたいし、やりがいがあるんですよね。こんな流れでインターンの形も、変わってきたのではないかと思います。
なるほど。では、学生を集めるという観点で、何か工夫されていらっしゃることとかございますか?
菊池:先輩のクチコミで私たちのインターンを知っていただくことが増えました。毎年、インターンに参加した学生さんが研究室の後輩にお勧めしてくれたりして。「先輩がとても良かったって言っていたので来ました」と言ってくれる学生はすごく多いです。
受け入れ部門自体はどのような形で選定されているのですか?
川勝:かなり幅広く、技術部門全体に協力を呼びかけています。ただ、その中でも研究開発をやっている部門からの立候補が多いですね。それと、受け入れ事業所の人事部門には実習期間中、学生さんが快適に実習を行えるように、いろいろとサポートをしてもらっています。
菊池:受け入れ部門の方も、部門でやっているテーマと専攻が違う学生さんが来ると、プログラム内容を学生さんに合わせて調整してくださったりしています。また、学生数は1テーマにつき1人~2人なので、非常に手厚い指導を行ってくれています。恐らくそういった受け入れ部門の主体性や柔軟性も、インターンの満足度の高さに繋がっているのかなと思います。
確かに学生からしたら嬉しいですよね。自分のことを考えて自分に合わせて内容を変えていただけるなんて、なかなかないですもんね。実際ご用意されるインターンのテーマは、どれくらいあるのですか?
川勝:全100テーマあります。
そんなにあるんですか!!?
川勝:はい。テーマ数の多さは、大きな特徴だと思います。先ほどお伝えした通り、1テーマにつき大体1人~2人が定員なので、社員とほぼマンツーマンでインターンを行います。
他社様のお話を伺っていると、1つのテーマに学生20~30人を集めて、5~6人にグループ分けして、1グループに社員1人がメンターに就くことが平均的です。1つのテーマに学生1人、社員が1人というスタイルは、凄まじいレベルで力を入れているなと感じます。
川勝:学生に対して、主な指導者が1人付くのですが、たいていその周囲にいる社員も、寄ってたかっていろいろ教えてくれます(笑)
菊池:1つの部門に1人~2人配属されるというイメージなので、1つの部門に社員が10人いたとすれば、会社全体で100テーマに対して社員1,000人ぐらいがインターンに関わってくださっているという状態なんじゃないかなと思います。
それは学生からしたら本当にありがたい環境ですね。インターンの参加希望者はかなり多いと思うのですが、選考は人事だけでやられているのですか?それとも現場の皆様も選考を担当しているのですか?
川勝:人事だけで選考を行います。専攻や研究内容とテーマの関係を選考では確認していきます。村田製作所にフィットするパーソナリティをお持ちで、ご自身の研究内容が部門のテーマに近い学生さんを選ばせていただいていますが、なかには研究内容より熱意優先ということもあります。
Chapter2現場体験型だからこそ深まる業界理解
実は今回表彰させていただくのは、「業界理解が深まった部門」です。就活会議に集まっている学生のクチコミを見ると、自社のことだけではなく、例えば電子部品の業界そのものについての理解もすごく進んだという感想が多かったんですね。何か工夫をされているのでは思ったのですが、いかがですか?
川勝:受け入れ部門がそれぞれ独自に工夫してくれているということになるのですが、そもそも会社全体として、ただ作業をするわけではなく、この仕事の背景がなんだとか、他社との競争関係がどうなんだといったことをきちんと理解するという企業文化が浸透していますので、学生さんに対しても社内のメンバー同様に接する中で、自然にいろんなことをインプットしてくれているのだと思います。
では、部門の皆様が自主的に学生に伝えてくれているんですね。 学生にとって意味のあることが自然にできるって本当に素晴らしいですね。
川勝:ありがとうございます。技術系、特に研究開発の仕事では、異質性に揉まれることも重要です。インターンを通じて普段の職場にはいない異質な人がやってきて、お互い刺激をし合う。そういう意味では現場も楽しんでくれているのだと思います。
菊池:受け入れ部門の方からは、学生さんが来てくれると、フレッシュな空気で職場が活性化されるといった声もいただきます。柔軟な頭を持ち、社員と違う角度で物事を見てくれるので、職場自体が活性化しているということもありますね。
なるほどですね。もう1つ伺いたかったのが、特に学生に馴染みのないBtoBの企業の多くは、自社の事業内容をどのように学生に伝えればいいか苦慮されていらっしゃいます。御社では何か工夫されている点はございますか?
川勝:そこはストレートに、製品内部のことをやっているから外からは見えないんですと言ってしまっています(笑)。でも、シェアはこんなに高いとか、世界が相手なんですとか、そんな話を徹底的に伝えています。そこに少しでも興味を持っていただけたら、関心を持って調べてくれるかなと。
菊池:インターンシップに参加されると、自分の目で現場を見て、そこにある仕事とか、そこで働く人を実際に体感することができるので、そういうところからもっと当社に興味を持っていただきたいなとも思っています。
学生のクチコミでも社員の皆様の人柄の素晴らしさだったり、とても速い仕事のスピード感に魅力を感じたという内容が非常に多いです。そうしたインターン中の気付きがきっかけで興味が深まって、ビジネスの内容もどんどん自分で調べてもらえるようになるというのが、実際のところなんですね。
川勝:インターンのテーマは、インターン用に無理に作っているものはまずありません。あくまで、仕事の一部を担当してくださいという形ですので、当然スピードを要求されますし、社員とのコミュニケーションも多分に発生します。「いつも通りの私たち」に触れていただいて、魅力的と言ってもらえることは嬉しい限りです。
そうですよね。学生のクチコミを見る限りでは、社員の方の雰囲気を伺い知れて、魅力的に感じるし、知れているからこそ、就職活動に臨むにあたっての志望度も上がったというクチコミが非常に多かったです。 15年前から始められて、今ここまでの規模になるまでの苦労をお伺いしたいです。各社に伺うと、現場の皆様の協力を得る部分に特に苦労したと仰います。
川勝:そうですね。たしかに開始当初は、インターンって何か効果があるのといった半信半疑のこともありました(笑)。ただ、インターン前の人事選考を導入したことが転機になりました。書類だけでは分からない、例えば、集団の中できちんと発言ができる、行動ができる学生さんを選ぶようになりました。そうすると、受け入れ部門もレベルの高い学生さんが来るようになった実感を持ち始めて、どんどん協力してもらえるようになっていきました。
Chapter3学生へのメッセージ
少しお話が変わるのですが、お二人から見てインターンに参加する際に心がけておいた方がいいことや、注意しておいた方がいいことがあれば、是非学生にアドバイスをいただきたいです。
菊池:学校生活において、実際に企業で働く機会はないと思います。ですので、まずは会社ってどういうことをやっているのか、どんな人がいるのかなどを想像してみて、その仮説に対して実際どうだったのかという結果を持って帰って、その後のご自身の研究姿勢にも活かしていただければいいかなと思います。
川勝:あまり身構える必要はないのですが、一方でやはり面接も受けて会社へ来て、一定期間過ごすということですから、社会常識を最低限は理解しておいた方がいいと思います。どのみち就職するとなると、社会常識は求められますから、ちょっとそれを前倒して意識し始めるぐらいはやっておいてもいいのではないかと思います。 あとは、「なぜこのインターンに参加したいのか」という点は、やっぱりきちんと考えていただけたらなと思います。これがないと、企業探しの軸もなく、インターン先の企業も探せないと思います。ぼんやりしていてもいいので、これかなといった答えが1つ、2つ、3つとあるといいなと思います。
ありがとうございます。もう一つアドバイスいただきたいことがあります。御社を受けたいと思っている学生に何かアドバイスできることがあれば、是非お願いしたいです。例えば、「インターンの選考ではここを見ている」といった観点などでお願いできればうれしいです。
川勝:インターンの面接を人事で手分けしてやっているとお話しましたが、質問している内容は、例えばこの2人で全く違うと思います。 ただ共通して意識している観点は、自分の考えを持って、それを自分の言葉で表現し、実際に行動に移すことが出来るかという点です。 会社という集団に入ってきたときに、この力がないとどうしても埋もれてしまいます。自分の主張を、独りよがりではなく、されどしっかりしてくれるかという点は重要視しています。あとは、社会性だったり、あるいは理解力や地頭だったり、そういったところは共通して見ているのかなと思います。
菊池:会社に入ってからも、やはりメーカーとしてチームで働く場面が多いので、チームで成果を出すことに意識を持っているというのはすごく大事かなと思います。
自律性とコミュニケーション力ということですね。最後に、お二方からこれから就職活動をはじめる学生に対して、何かアドバイスをいただけますか?
菊池:何の先入観もなく、いろんな企業の社員と会えて、かつインターンという形で企業の中に入れる機会は本当に今の時期しかないと思います。その経験は、社会に出てからも非常に役に立つ場面が結構あります。なので、思い込みは捨てて色々な企業を自分の目で確かめる場を、たくさん持った方がいいと思います。
たしかに。ご自身もかなりいろいろな企業を見てみたんですか?
菊池:そうですね。私も3年前に就職活動をしていたのですが、メーカーや電子部品という領域にこだわらずに幅広く見ていました。金融業界や人材業界であったり。
ちなみに、村田製作所に決められた理由は、どんなところですか?
菊池:いろいろな業界を見ている中で、確かな技術力を持ち、世界で認められている日系メーカーに惹かれていきました。その中で、自分が大事にしている考えや思想と、会社の理念が合致している会社がいいなと思って、村田製作所に入社しました。実際に、何人もの社員とお話しさせていただく中で、自分もこんな人たちと一緒に働きたいと思い、自信をもってここに決めた形です。
川勝:技術系の私からすると、例えば「エンジニアの世界でずっと生きていきたい」と思うのであれば、自分は何をやりたいかを考えてみてほしいと思います。狭く絞っていく必要はありませんが、自分の興味のある分野や今までの経験から、「こんなことがしてみたい」とか、「こんなことができたらいいな」というところを、徐々に具体的に言葉にしていくといいんじゃないかなと。
言語化していくということですよね。競合ではなくて、御社でエンジニアをやることの喜びはどういったところでしょうか?
川勝:やはり技術にこだわっている会社ですので、ムラタの技術に誇りを持って仕事をしている技術者が多い中で仕事ができるのは魅力の一つではないでしょうか。だからこそ、自分の想いをしっかり発信していける方と一緒に仕事をしたいと思っています。
本日はいろいろ教えていただいてありがとうございました。
インタビュー
人事担当者に、評価が高いインターンを開催する上で大切にしていることや苦労されている点についてお伺いしました